お茶の間は消えゆく空間なのか…?

ここ2、3年、テレビの視聴率が低迷していることを耳にする機会が増えています。
当然と言えば当然。スマートフォンが普通になった今、好きな場所で好きな情報を手に入れたり、発信できるようになっています。テレビの前に放送時間に合わせて座って見る理由がないのです。

すでに映像は、スマホを片手に好きな時に好きなところ楽しめます。
これは大きな変化です。それまで当然だった「相手に合わせる必要」がなくなり、それがいかに「不便」であったのか知ることになります。

不便だと思わず使っていたものが本当は不便だった…ということを知ると、人は以前の不便なものは使わなくなります。
映像作品を見て楽しむ人にとって、とても良い時代です。

しかし、それによって失われたものもあるのです。
それは「お茶の間で一台のテレビを囲んで、家族や友達とワイワイ言いながら見る」という風景です。

スマホで各々が好きなものを見る今、この風景は消えて行くのみなのです。

……と、思ったのですが、なんと、消えゆくと思われたお茶の間は世界に拡散しているのが事実だったりします。

youtubeで見かける動画の種類で「リアクションムービー」というものがあります。
何かを見たり試したりした時の自分の反応をビデオで撮影したものです。

それでよくあるのが、海外の人が日本のアニメを見ている自分のリアクションを撮ったもの。
今、日本のアニメは、海外向けに字幕を付けて、日本での放送と同時に世界のあちこちで配信をしているものが多くなっています。

それを見ながら、自分を撮っただけのリアクションムービーをたくさんyoutubeの中に見つけることができます。
そして、それぞれの人のリアクションムービーをひとつにまとめた「マッシュアップ」というものが、2015年ぐらいから登場してきたのです。

リアクションマッシュアップは、動画の画面を9つに分けて、真ん中にアニメの映像、その周囲に色んな人のリアクションを散りばめてあるのがよく見かけるパターンです。

真ん中のアニメは、そのままだと著作物を勝手に公開していると判断されてしまうため、音が出ていなかったり、画質がひどく落としてあったり、アニメの上から半透明のも模様などをかぶせてあったりします。
一度ちゃんとそのアニメを見た人なら、今はどのシーンなのかが分かるけれど、初見の人には何が写っているか解らないように加工してあります。

百聞は一件にしかず。それでは、実際に見てみましょう。

どうでしょうか? まさにお茶の間ですね。
お茶の間は消えゆくどころか、ネットで距離を詰め、見知らぬ海外の人と共に過ごせる空間として存在しているのです。とても奇妙な空間です。ひとりひとりが独立しているのに、共に過ごしているような感覚。

ぜひ、この感覚を味わってみてください。