ネット媒体がM-1チャレンジャーを苦しめる?

(これは、M-1 2018決勝以前に書いたものです)
12月と言えば、漫才の日本一を決めるM-1グランプリの決勝戦が行われます。
決勝に出場するには、1〜3回戦を、準々決勝、準決勝と勝ち上がってくる必要があります。
すべて観客の前で行われます。今までずっとそうでした。
しかし、今年大きく変わった所があります。そこで行われた全てのネタがネット放送局のGyaoで無料配信されているということです。
もちろん、決勝戦の会場にも観客が入ります。
そこにいる人たちは、ふつうの人よりお笑いへの熱量が高い人が多いのです。
つまり、ネタが配信されているなら、すでにそれを見ている確率が高いということです。

そして、困ったのが、お笑いというのは、見たことがあるネタだと、面白さが半減してしまうというところです。

これまでだと、M-1が始まるまで、劇場で何回も同じネタをやって、仕上げていくというのが定石でした。
しかし、それだと、決勝で既出のネタをやることになり、会場の反応が悪いということに、漫才師たちは、薄々気づいてきたのです。
それを避けるために、劇場ではなく、移動中の新幹線の隣の席の人に向けていきなり漫才をして、その反応を見るコンビがあるという噂がたっています。

逆に、ミュージシャンはどうでしょうか?
漫才とはまったく逆で、こっちは、同じことをやると観客が喜びます。
ずっとおなじことをやってて、本人が飽きてなんだかちょっとズラして歌ったりすると、受けが悪くなります。

また、同じ落語はどうでしょうか?
こっち漫才と同じお笑いですが、その話ネタを知っている人の前でやるのが前提です。
これは、ミュージシャンとも違っていて、大筋は同じでどれだけアレンジするかという楽しみ方になります。
そういう意味では、落語とジャズはすごく似ています。知っている出し物をどれだけ離れてまた戻ってくるかみたいな。

漫才は、一期一会が一番おもしろい、どれだけ見たことのない技が出せるか、……そうなると、ものすごくエクストリームな競技に思えてきました。