ストリートビューで想像する各国の隠れた事情(その2)〜ベラルーシ編〜

世界の街並みを見ることができるgoogleのサービス「ストリートビュー」。
「世界中のどこの街だって、事前にその様子を知ることができるから便利だね」と思ったら大間違い!
まだまだストリートビューがない国がたくさんあります。
そして、ストリートビューがない理由も国それぞれ。
前回のドイツ、オーストリアはナチス時代に由来する「個人のプライバシーへの考え方」によるものでした。

そして、今回は「ベラルーシ」です。
ベラルーシは、ロシアとEU諸国に挟まれる場所にある国です。

実は、このベラルーシはIT産業が盛んな国として有名です。
欧米のIT企業のアウトソーシング先として、かなりの実績を上げているとのこと。
有名なところだと、プレイヤーが一番多いオンラインゲームとしてギネスに登録された「World of Tanks」を制作したWargaming社がベラルーシにあります。

ITに明るい国なのに、なぜストリートビューがないのか?
そこには、独りの闘う漢の姿が見えてくるのです。

ベラルーシは最悪の独裁国家!?

ベラルーシは、以前はソビエト連邦の一部でした。
1990年のソ連解体を受け、翌年にベラルーシ共和国として独立宣言。
1994年の最初の選挙からアレクサンドル・ルカシェンコという1人の大統領が何期にも渡って統治しています。

ルカシェンコ氏は元ソ連の共産党員で、独立後に公用語ではなかったロシア語を公用語に引き上げたり、ロシア政府寄りの政策を行っています。そのことから欧米諸国(主にアメリカから)ではベラルーシは「最悪の独裁国家」と呼ばれ、ルカシェンコ氏は倒すべき独裁者とされています。

しかし、本当にそうなのでしょうか?

ロシアの大統領プーチンは、ずっとこのベラルーシを吸収合併しようと色々な手を打ってきました。
もし、ルカシェンコ氏が本当にロシア寄りだとすると、とっくにロシアに吸収されていたハズです。

ベラルーシの人口比率をみると、ベラルーシ人が83.7%、ロシア人が8.3%です。
圧倒的にベラルーシ人が多い中で、何期も連続して大統領を務めるには何かがありそうです。

ロシアがベラルーシを追い込むが……

2010年にベラルーシとロシアの間でこんなことがありました。
ロシアが、ベラルーシへ天然ガスの代金未払いを理由に供給量の削減を開始。しかし、ベラルーシはパイプラインの通貨料が未払いだと言い、ロシアからEUへのガスの移動を全面的にストップすると宣言。
結果的にはベラルーシがガス代を支払うことになりましたが、大国に牙を剥く姿勢は、なかなかではないでしょうか。

さらに、ロシアはガス代を値上げし、ベラルーシを追い込み、国営企業やパイプラインの施設を買い取るといういう方法で経済的に組み伏せることに成功した。

それで、ベラルーシが事切れたかと思ったら大間違いで、ルカシェンコ氏は土地の理を活かし、中国から15億ドルの経済投資を引き出している。中国のEUへの足がかりとして話を持っていったのです。
これによって、経済破綻を回避し、さらにロシアと中国をバチバチさせるというなかなかの戦略です。

話はストリートビューに戻ります。
実は、ベラルーシよりロシアの方が断然ストリートビューが網羅している範囲が広いのです。

ベラルーシとロシアの国境
ベラルーシとロシアの国境

どちらかというとロシアの方が反米な感じがして米国企業のgoogleに街中の様子を撮影させることなんて許さいないと思うのですが、なんとも奇妙です。

私が思うストリートビューがない理由

ではなぜベラルーシにはストリートビューがないのか?

ベラルーシの南にウクライナがあります。
ウクライナもベラルーシと同様に、かつてはソビエト連邦の一部でした。独立後のベラルーシは、自由経済、つまり西側諸国よりに政策を展開します。ロシアはそれが気に入らず、2014年、ウクライナ南部のクリミアにロシア軍が侵攻します。(ロシアはロシア軍ではないと言ってますが)
実はクリミアにもロシアから欧州へのガスのパイプラインの常用拠点があります。

その状況をみて、ルカシェンコ氏は西寄りでもない、ロシア寄りに見えて決して懐柔されない、遠いアジアの資金を引き出してなんとか国をつないで行く絶妙な政策を行っているとも言えます。

そして、彼が何より気にしているのが、軍事介入です。
軍が侵攻する時に何が重要かというと、国内の状況を細かく把握することです。
ルカシェンコ氏は、ストリートビューで国内の状況を収集、拡散されることを軍事的な理由で拒んでいるのではないでしょうか。
かつてソ連の共産党員だった彼は、ロシアがどう出てくるかを少なからず知っているだろうし、NATOがリビアへ軍事介入したときに「ナチスより最悪」と発言しています。

そんな訳で、ベラルーシにストリートビューがないのは、(良いか悪いかは別として)各国と闘うルカシェンコ氏がいるからだと推測されます。