インターネットとマスメディア 〜否定する側と突破する側、ラジオの豪腕〜

個人的な意見ですが、テレビや新聞といったマスメディアというのは、インターネット文化を嫌っています。
なぜなら、インターネットを使って、個人で情報を発信できるようになったことで、今まで自分たちがやってきた「世論の方向性の操作」が上手くいかなくなったためです。

そんなマスメディアの中で、唯一インターネットを上手に活用しているものがあります。
それは、「ラジオ」です。

現在、日本にある多くのラジオ局が「radiko(ラジコ)」というサービスに参加しています。
radikoは、サイマル放送と言って、ラジオ放送している番組をそのまま同時にインターネットでも聞けるようにしたものです。

ラジオの音声をそのままインターネットで流すことは、技術的に難しいことではありません。
一番難しいのは、途中でな流れる音楽やCMの権利関係の折り合いをつけるのがとても大変なのです。

radikoは、そこをどうクリアしたか?
まず、ラジオは、地震などの被災時にとても大切な情報源であることを、偉い人にアピールします。
実際に、阪神・淡路大震災の時にラジオが大変活躍したことを引き合いに出します。
次に、地形的な問題だけではなく、高層ビルが増えて都心でもラジオ難聴地域が増えていることを示します。もちろん嘘ではありませんが、実際にサイマル放送を開始したい理由は、「ラジオを少しでも多くの人に聞いてもらうきっかけが欲しい」だと思うのですが。しかし、それでは、権利関係にうるさい人たちを黙らせることができません。そこで、「被災時に大切だよね!」という誰も反論できないところを持ち出してきたというわけです。

そして、「実験だから!」という名目で2010年の3月15日に何気なくサイマル放送を開始します。その音質の良さは、本当に驚くもので、今までのラジオファンだけではなく、普段パソコンの前で仕事をする人たちを少なからずラジオの世界に引き込みました。そして、12月までそのまま「実験してま〜す」と言いながら、続けて、有名なラジオ局が共同で「radiko」という会社を作って本格的に運営を突入します。

さらに、サイマルだけではなく、ポッドキャストという、放送したものを後から聞くことができるサービスもどんどん始まっていきます。そうなると、サイマル放送を録音したりポッドキャストで手に入れた番組をYoutubeで公開する人たちが出てきます。実際、これは、著作権違反なのですが、タダで宣伝してくれているので、ラジオ局は知らないフリをしています。中には、明らかに高度な編集をしてあったり、放送後すぐにyoutubeに載ったりで、どうもファンがやってるフリをして、ラジオ局がやってるんじゃないか?と思えるものもありました。オールナイトニッポンで有名なニッポン放送は、公式でYoutubeにどんどん番組を公開していた時期もありました。(いつの間にかやめてしまいましたが…)

現在では、このradikoに44都道府県の80のラジオ局が参加しています。
radikoは、自分の住んでいる地域のラジオ局の番組だけを聞くことができます。
これは、地方のラジオ局がせっかくradikoに参加しても、「東京や大阪でやってる番組の方が面白い」と言って地元の人がその地域のラジオ局の番組ではなく、都会の番組を聞いてしまうことを恐れてそういう取り決めにしたようです。

しかし、2011年の東日本大震災の時は、この制限を解除しました。
これは、被災地のラジオ局が番組を制作できないことと、より多くの情報を被災者に届けるための措置でした。
つまり、技術的には、スイッチ1つで制限は解除できるということが解ったのです。
そして、2014年4月には、月額300円ぐらい払えば、この制限をなくすことができるサービスが開始されました。
「地方のラジオ局はどうすんの?」という反対意見もあったと思います。
おそらく「何言ってるんですか!地方の番組を全国に広げるチャンスですよ!水曜どうでしょうみたいに大ヒットする可能性が生まれるんですよ!」という感じであれよあれよと押し進められたんだと考えられます。

そう、ここまで来て解ったのは、どこかに「口八丁手八丁」でうまいことやる人がいんじゃないか?ということです。今風に言うと「フィクサー」と呼ばれる人物が。

radikoの流れを見ていると、結構グレーで難しいところをグイグイ押して通してる感じが拭えません。
このフィクサー、どんな人物なのでしょうか?気になります。

あと、もうひとつ、radiko以前のラジオ業界は、はっきり言って底辺の状況でした。正直、存在しているのかどうかも世の中に認知されていないような。逆にそのような状況で、あれこれ外野からツッコミが入らなかったからこそ、グレーゾーンを力技で突破して行く強攻策が採れたのだと思います。

そして、音声データの扱いやすさとインターネットでの拡散に相性が良かったことで、古くからありながら、一番新しい動きを業界全体でできたのだと思います。

現在では、新しいラジオ番組が始まると、あらゆるSNSでの展開を行っています。パーソナリティーのLINEブログや、ツイッター、facebookページ、有料のメールマガジン、コーナーの有料配信…とにかく、ありとあらゆる方法で拡散して行くのです。

さらに2014年の12月には、ワイドFMと言って、AM放送のサイマルをFMでも聞けるということを始めました。
しかも、先陣を切ったのは、四国と富山の地方局でした。
ワイドFMの名目が、高層ビル群でAMラジオを受信できない、しかも、radikoを聞けない人たちのためなのに、「なぜ四国と富山?」というグレーな雰囲気がまたいい感じです。

さて、これから先、ラジオはどうなって行くのでしょうか?
ぜひ、一緒に注目してみませんか? いや、耳を傾けてみませんか?